とろける米沢牛、
個性あふれるワイン。

名湯の湧く赤湯駅で美食を堪能

奥州街道の宿場町として栄え、今なお上質な温泉が湧く赤湯。周辺にはワイナリーが6つあり、それぞれが個性を生かしたワインを醸造している。また近隣で育てられている米沢牛が食べられる店もあり、旅の目的地とする魅力は十分。山形新幹線赤湯駅を起点とするおいしい旅へ、いざ。

記事制作 dancyu

現地だから
こその
愉しみ。
6つの
ワイナリーの
個性を飲み比べ

赤湯が位置する南陽市は、全国でも古くからぶどうを栽培してきた歴史をもつ。寒暖差のある気候や日照時間の長さ、水はけのよい土壌といったぶどう栽培に適した条件が揃っている土地だからだ。現在も6軒のワイナリーが、赤湯ならではの良質なぶどうでワインを醸造している。
赤湯のワインについて知りたいなら「結城酒店」へ。創業三百余年の老舗酒店で、山形ワイン・地酒を中心に取り扱う。特にその2号店である赤湯温泉店の地元愛にあふれる充実のラインナップは圧巻。
赤湯の6つのワイナリーすべてのワイン、さらに周辺の山形のお薦めのワイン、地酒などが手に入る。「旅行者の方はナチュラルワイン志向の人に人気の『イエローマジックワイナリー』や、無添加醸造で天然酵母を使ったワインを手がける『グレープリパブリック』がお目当ての方が多いですね。日本で2番目に古いワイナリーで、羊を放牧した農法で育てたぶどうをノンフィルター製法でワインに仕上げている『酒井ワイナリー』も人気です」と、結城酒店17代目の結城知也さん。「個性と技が際立つ老舗ワイナリーもお薦めです。樹齢80年の古木を持つ『須藤ぶどう酒工場』では、今も手搾りという昔ながらの手法でワインをつくっているんですよ。また、30種類以上ものラインナップが魅力の『大浦葡萄酒』や、生産するワインの90%以上が地元で消費される『佐藤ぶどう酒』のような地元密着型のワイナリーも、ぜひ知って欲しいですね」。

左:赤湯地域全体の活性化にも力を入れている「結城酒店」。生産者の高齢化によって耕作放棄地が増えている現状を打破すべく、ぶどうを買い取って地元のワイナリーと連携し、オリジナルのワインもつくっている。本店でも試飲は可能だが、赤湯温泉店ではより多彩な数種類のワインや地酒の試飲ができる。
右:「結城酒店赤湯温泉店」の窓から向かいを見れば、「赤湯温泉観光センター ゆーなび からころ館」の足湯(無料)が。購入したワインを持ち込み、温まることもできる。赤湯には2つの源泉があり、山中ではなく町中に12軒の温泉旅館と3つの公衆浴場が点在している。

左:赤湯にあるワイナリーの一つ、「グレープリパブリック」は、ワイナリーを訪れて買うこともできる。有機栽培の自社畑のほか、街全体を「ぶどう共和国」として盛り上げたいという想いから、契約農家の畑のぶどうを買い取っての醸造も手がけているそう。
右:「グレープリパブリック」は、赤湯の風土=テロワールを表現することを大切に、亜硫酸無添加の自然なつくりのワインを手がけている。イタリア語でオレンジ色を意味するアランチョーネは2,970円。

結城酒店赤湯温泉店

住所 山形県南陽市赤湯772-2
電話番号 0238-43-5151
営業時間 9:00-18:00
定休日 水曜
アクセス 山形新幹線赤湯駅より車で約5分。

ゆーなび からころ館

住所 山形県南陽市赤湯754-2
電話番号 0238-43-3114
営業時間 9:00-20:00(冬季は平日-18:00/土日祝日-19:00)
定休日 水曜(祝日の場合は営業、翌日休)
アクセス 山形新幹線赤湯駅より車で約5分。

日本三大和牛の
一つ、
米沢牛と
地元ワインに舌鼓

赤湯ワインのお供には、三大和牛の一つともいわれる米沢牛を。米沢牛とは、山形県置賜地方(米沢市を中心とした三市五町)で最も長く飼育された黒毛和種の未経産雌牛のこと。取り扱える市場は限定されており、生後の月齢33カ月以上のもの、肉質及び脂質が優れているものなど厳密な規定がある。このエリアでは農耕・運搬などを目的として、牛の飼育が江戸中期から始まっている。それが明治時代には主に食用となり、食味の良さから徐々に広く世間に名が知れ渡ることとなった。古くからの食文化として今でも生産、流通、出荷、消費が地元で行われている、全国でも希な銘柄牛なのである。
赤湯は米沢の牛枝肉市場が近いため、周辺の温泉宿や飲食店でも食べられるところが多い。市場に直接の買参権を持つ数少ない精肉店「肉の旭屋」が経営する「食楽亭旭屋」の5代目社長、山口 智さんは言う。「最大の特徴は、きめの細かい霜降り。香りのよい脂は食べると甘く、融点が低いので口の中でさらりととろけていくんですよ。赤身の部分には旨味があります。米沢牛を堪能するならまずはステーキや焼きものがお薦めですね」。 おいしいものが食べられる穴場を探すのも旅の醍醐味だ。

左:肉寿司3点盛りは1,430円。左から醤油で味つけした希少部位のイチボ、塩とわさびでいただくミスジ、だしジュレをのせた自家製ローストビーフ。瞬時に消えてなくなるおいしさ。
右:ザブトンやカイノミ、ミスジ、牛タン、サーロインなど人気部位5種が盛り合わせになった米沢牛極盛10,000円。テーブルの上で各自が石焼きにし、土佐醤油や自家製のタレ、塩、レモンなどで味わう。

そのほかにも赤湯には有名なラーメン店や山形の日本酒、山の傾斜を利用したハングライダーなどのアクティビティなど楽しみ方はいろいろあるが、ともかく温泉と美味さえあれば、旅の目的に不足なし。ぜひ、赤湯ワインと米沢牛を堪能しに、赤湯を訪れてみて。

「食楽亭旭屋」の母体である「肉の旭屋」では米沢牛や米沢豚の量り売りだけでなく、厳選した肉を使った自家製惣菜や冷凍コロッケ、ローストビーフ、手づくりの弁当なども販売。地元の人も足しげく通う。

食楽亭旭屋

住所 山形県南陽市二色根2-2
電話番号 0238-50-2929
営業時間 11:30-14:00/17:00-22:00
(L.0.21:00)
定休日 水曜
アクセス 山形新幹線赤湯駅より車で約3分。

肉の旭屋

住所 山形県南陽市三間通367-1
電話番号 0238-43-2639
営業時間 9:00-18:30
定休日 水曜
アクセス 山形新幹線赤湯駅より車で約3分。

文:藤井志織 撮影:山田 薫